周囲とは隔絶した場所にあり、喧噪とは無縁の隠れ家でいただく湯豆腐懐石は格別である。

　近衛文麿の別邸と言われる格式の高い建物は、大堰川の川面や四季折々の木々が見渡せる。

　床の間の掛け軸や生け花、書画が配された空間は五感全てが満たされるほど癒やしの場だ。

　料理だけで無く、仲居さんの丁寧なおもてなしも秀逸。ここの料理を食べた観光客がそのまま来年の予約をして帰ることも珍しくない。

　写真は昼のコース「松葉（しょうよう）」。食前酒、先付けの豆腐、八寸盛り、湯豆腐、揚げ出し豆腐、ご飯と香の物、ちりめん山椒、デザートからなる。

　八寸盛りは季節の玉手箱で、ユニークな創作料理も含め一つ一つ完成された作品だ。写真は8月の盛りのものだが食用ほおずきや鮎、鱧など食べるごとに笑みがこぼれる。豆腐は大豆の味が濃いし、デザートは豆腐アイスに生八つ橋と黒蜜で熱いほうじ茶も供されてバランスが絶妙。

　税別3,800円のランチであったが、全くもって納得である。時々こういう食事が出来るように人生頑張ろうと思うのである。