たくさんの建物があり、個室や座敷に掘りごたつ、テーブル席や大広間など様々な客室が用意されている。

　時間があれば食後に庭園の散策もお勧めだ。というかこの庭園も見ておかないともったいない。

　湯葉のコースや会席、各種鍋料理もあるが、やはり順正に来たなら湯豆腐のコースだろう。3千円から用意されているが、写真は4千円の「月」コース。自家製の豆乳に胡麻豆腐、季節の前菜、季節の炊き合わせ、お造り、湯豆腐、豆腐田楽、野菜の天ぷら、香の物、ご飯、デザートと続き十分なボリュームだ。

　京都には多彩な豆腐があるが、なめらかな嵯峨豆腐、しっかり固めの南禅寺豆腐の系譜がある。当然順正の豆腐は南禅寺系のしっかりと詰まった豆腐。嵯峨野で生まれ育った我が輩はプリンプリンに滑らかな嵯峨豆腐に水尾の柚子を効かせたタレが好みだが、順正の豆腐に酸味を抑えた出汁醤油もなかなか素晴らしい。

　たかが湯豆腐、されど湯豆腐。高級料理ではないが滋味溢れるごちそうである。