世の中にはメガビタミン主義という思想が存在するらしい。要はビタミン類を大量に摂取して健康にハッピーになろうというものである。コンビニや薬局に行けば誰でも手軽にビタミン剤（サプリメント）を買うことも出来るし、近年よく売れているようだ。
例えばビタミンCは成人の1日摂取所要量は50mgと言われている。ミカンなら2個、イチゴなら4粒も食べれば50mgは摂取できる。これがメガビタミン主義では2,000mgなどという途方もない量の摂取を指南している。ビタミンA、B群など多くの栄養素もこの調子である。
当然、普通の食生活ではこのような大量の栄養素を摂取することは不可能で、いきおいビタミン剤に頼ることになる。
ビタミン等の栄養素の大量摂取というのは、実験によって記憶力や免疫力が増したりするらしい。だが我が輩は何か違和感を覚える。確かに効果はあると思うが、こんなものは一種のドーピングと同じで何か副作用やリバウンドがあると考えてしまうのである。
ビタミンCが1本に1,000mg入っていると宣伝しているジュースもあるが、必要なのは50mgである。強い緊張や怒り、タバコの煙を吸うなど心身に強いストレスがかかったときにはビタミンCが壊れるのである程度増やしてもいいが、どうせ水溶性のビタミンだし体に貯蔵されるわけでもない。極端なことをせず日々バランスの良い食生活を取れば良いのである。
かのエルビス・プレスリーは一般的には心臓麻痺で死んだとされるが、毎日ドーナツをほおばり、ボウル一杯のビタミン剤を服用して栄養失調だったという。
大学生の時に、環境と健康の分野で有名な教授の講義を聞いて良く覚えていることがある。退屈な講座が多い中で数少ない楽しい講義だった。もうだいぶ忘れたが、メガビタミン主義の話も出てきて、毎日大量のビタミン剤を摂取している人が、北極圏のエスキモーと生活した途端、壊血病（ビタミンCの欠乏で起こる恐ろしい病気）になったという話を聞いた。要はビタミン依存症状態だったわけである。
その教授が言うには「何事も程々の食生活をすれば間違いがない。マスコミの情報に踊らされて右往左往する事だけは避けるように」と言っていた。確かにこれが最高の健康法だと思う。そもそもビタミン剤を常用すること自体、食生活が狂っていると認識すべきである。
このメガビタミン教には大勢の信者がいるらしい。我が輩の戯言なんぞ聞いてもどこ吹く風であろう。大いに結構である。思う存分ビタミン剤を服用し、死ぬほど健康になっていただきたい。