106 その芸は生きるため

 いつしか子供たちも4歳と1歳半になった。まあ、二人とも芸人である。

 スーパーに行くと、鮮魚コーナーでは「おさかな天国」、総菜コーナーでは「あいうえおにぎり」の曲が良くかかっているが、長女はフルコーラス歌いながら踊るのである。そしてお気に入りののおにぎりをねだる。ついでにお菓子もGETする。

 次女も負けてはいない。ソフトクリームを買って長女に1つ渡し、我が輩も1つ食べようとすると次女は叫びながらねだる。そこでスプーンにひとすくい分けてやろうとすると、床に伏せて手足をばたばたさせて嗚咽するのである。周りに人が集まってくるので、事態を収拾するためにやむなくソフトクリームを丸ごと渡さざるを得なくなる。一度床を転がり回って、二階の階段から落ちそうになったほどである。

 食べ物は人並みに与えているつもりなのだが、何か欠食児童みたいでかっこ悪いのである。

 二人とも最初に覚える言葉はママは「マンマ・マッマ」。我が輩は「バッバイ」である。仕事等で良く出かけるとはいえ、極めて的確な状況認識である。

 また、二人とも家の中では妻にばかり甘える。しかし、一歩玄関を出ると今度は我が輩にだっこを求める。この辺りの親の使い分けも見事である。今さらながら、芸は身を助けるということを我が子に教えられた次第である。


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