4月25日に起こったJRの尼崎脱線事故、107名の死者が出る大惨事になってしまった。我が輩は普段から鉄道・バス・飛行機であちこち飛び回っているだけに、ショックでありとても悲しい思いをしている。
また、母校の学生も数名犠牲になってしまったようで本当に他人事ではない。亡くなられた方々のご冥福をお祈りいたします。
当然、事故を起こしたJR西日本は各方面から批判の集中砲火を浴びている。これだけの大事故を起こしたわけだから糾弾されて当然であるが（ここではあえて触れないでおく）、その報道に関して違和感と危機感を感じている。
悪役の筆頭として事故を起こした運転士にスポットが当てられ、過去の事故（オーバーラン）歴や教育指導の実態が報道された。ご丁寧にテロップで"運転士にはアルコールは検出されなかった"とさも残念そうな文章が流れた。
そのうち若い頃の卒業写真や文集まで公開され、昔のバイト先や近所に聞き込みまで行っている。そこでインタビューを受けた人が一様に「まじめな青年」と答えたため、その後各社は一斉にJRネガティブキャンペーンを展開し出したように思う。
過密ダイヤや遅れに対する社内でのプレッシャー、安全装置の更新の遅れなどを指摘してきたが、格好の餌食となったのが事故当日のボーリング大会等の不謹慎な事例である。もちろん不謹慎なことであり、遺族感情としても許せないと思うが、本質はJRの危機管理体制の不備や社内教育の不徹底であり、そのような些末な事象をあぶり出しても何ら建設的な議論は起こらない。
当日我が輩は早朝から大阪に仕事に行っていたが事故のことは知らなかった。ようやく午後に梅田の街頭テレビで事故を知って唖然としたものである。JR社内の放送も30回流されたが情報は二転三転し、一度も死者が出たことは伝えなかったし、休暇を取ってボーリング大会をする社員にしてもタイムリーに正確な情報が入るのは難しい（もちろんどんな事情があるにしろ結果的に不適切な行動ではある）。
それをことさら大げさに取り上げ、天王寺車両区の区長をカメラの前に引きずり出して謝罪させ、ボーリング場や居酒屋を映して3,500円の飲み放題コースなど意味のないニュースを流し、ボーリング場の支配人に「どんな様子でしたか」「いや、普通にボーリングしてましたよ」、次は居酒屋の店主に「彼らの様子は」「普通に飲んでましたけど」など荒さがしに必死である。
記者会見での記者の低俗な罵声も見ていて非常に気分が悪い。「おまえでは話にならん、社長が答えろ」「死人が出とるんやぞ」「本当に申し訳ないと思てんのか」など、チンピラの恫喝かと思った。被害に遭った当事者ならともかく、報道機関は客観的に正しい情報を迅速に伝えるのが使命である。JR側の不手際には毅然と論理的に応酬すれば良いのである。
客観的な原因究明や今後の教訓、類似のリスクに警鐘を鳴らすなどのや本質に迫る報道は少なく、ヒステリックで子供じみた論調が支配し、日本中に"JR憎し"の風潮を作り出している。
これは中国や韓国の反日キャンペーンと同じである。歴史を遡れば戦時中、大本営の嘘情報を国民に垂れ流し、"鬼畜米英"などと意味のない感情論で扇動したのと何ら変わりがない。
その影響もあってか、置き石事件やJR社員への暴力や嫌がらせが連日続いている。万一、JR関係者が自殺したらマスコミは謝罪と賠償する覚悟はあるのだろうか。正義の味方気取りで勘違いしてはいないか。
JRの内部資料を次々公開しているが、警察じゃあるまいしそんな権限はあるのか？これって犯罪じゃないのか？
14年前、信楽高原鉄道の事故でもマスコミはさんざん鉄道会社を叩いたが、1ヶ月も経たない内にほとんど報道されなくなった。今回もギャーギャーわめいて終わり、なんてことはやめてもらいたい。
今回の事件は確かに、JRの暴走で起こった。しかしそれ以上に暴走しているのはマスコミのようにも思えるのである。