前回の続きである。我が輩の子供は最近ビーズでおもちゃやアクセサリーを作るのに凝っている。そこで手芸店などでビーズを買うのだが、これが結構高い。小袋に入って300円くらいするので、何種類ものビーズを買うと数千円の出費になる。
とあるショッピングセンターの一角にある手芸店で、興味深いものを見つけたのである。
「ビーズつめ放題 300円」
大きなトレイに山盛りのビーズ。そばに袋が置いてある。その大きさはA6サイズ（はがき大）であったが、一杯につめればいつもの小袋10杯分程度の容量はあるではないか。これだ！
300円を払い、我が子の見守る中、思う存分ビーズをつめる。しかしレジに持ち込んだ直後、予想外の展開が襲った。「袋のチャックを閉めて下さい」 え。。。
よく見るとその袋はチャックがついている。何のことはない。これを閉めるには半分近くビーズを戻さないといけない。がーん。何がつめ放題だ、こんなのつめ放題にかこつけた、体のいいセルフサービスではないか。
このときの敗北感は計り知れないものであった。だがもう後には引けない。あることにひらめいた。袋はビニール袋である。しごいたり揉んだりすれば伸びるのではないか。
こうなったらやるしかない。破れないように必死に袋を揉んで伸ばし、少しずつ容量を拡大していく。おお、少しチャックが締まった！あと一息である。最後の一押しでチャックが締まった瞬間、ポン！と袋の底がはじけたのである。
とはいえ、チャックが締まったのが一瞬早かったので結果的にOKとなった。
「こんなにつめた人、初めてすわ」レジのおばさんの顔が引きつっていたことはそのとき気にしていなかった。家に帰り、大量のビーズを子供の前で箱にぶちあけた我が輩は人生でも最高に誇らしい顔をしていたはずである。
翌週、味をしめて再びこの店に来ると、異変があった。「ビーズつめ放題」の販売は中止されていたのである。純粋な我が子の夢を奪った店の罪は深い。ここでも僅かな慰めは、「あの店での最高記録保持者」が我が輩であるということであった。