544　岩上神社（西陣）（京都市上京区）

　西陣エリアの浄福寺通、織成館（京都裏道案内 308）の南に岩上神社という巨石を祀る神社がある。

　神社と言うよりも塞ノ神、祠、辻堂のような簡素な佇まいである。

　京都市中ではこの場合、地蔵菩薩が祀られることが通り相場であるが、巨石というのは意外に珍しい。

　成人男性ほどの大きな岩が丁重に祀られている。もともと霊石として堀川二条にあったものとか弘仁年間（810〜824年）に冷泉院の離宮にあったとも言われている。その後六角通、さらに御所の中和門院の屋敷へと移されるが怪異現象が続き、最終的にこの場所に移され山岩上寺と称されたが、江戸時代の度重なる大火で荒廃した。

　地元では岩上さんと呼ばれ、子育てや授乳の信仰を集めている。

　敷地は狭いが四季折々の花木が植えられ、よく手入れされている。

　いわれは不詳であるものの、もしかしたら千年以上もの間数奇な運命をたどった岩が、このように市中に溶け込んでいる様は京都の奥深さを感じる。